株式会社アトラスは16日、従業員の報酬制度を改定すると発表した。基本給の引き上げを実施し、2026年4月入社の新卒初任給を現行の30万円から33万円に上げる。正社員と契約社員の平均年収も15%増やす。固定残業時間は30時間から20時間へ見直す。
改定の狙いについてアトラスは、ユーザーに感動体験を届けるには社員一人ひとりのクリエイティビティの発揮と生産性の向上が重要であり、そのための人材投資が不可欠だと説明する。物価上昇が続くなかでも社員が安定した生活を営めるよう、報酬の増額と処遇の改善を通じて、生活基盤を下支えする考えを示している。固定残業時間の短縮により基本給比率を高めることで、社員の裁量ある働き方と安定した処遇の両立を図る。
初任給33万50円に改定
制度改定の柱は、新卒採用と既存人材の双方にかかる処遇の引き上げだ。2026年4月入社分の新卒初任給は33万50円とし、内訳は基本給28万2900円、固定残業手当4万7150円(平日残業20時間分)とする。これにあわせて、正社員および契約社員の平均年収を15%増加させる方針も示した。
物価上昇が続く外部環境も背景にある。消費者物価指数の上昇率は2023年平均2.8%、2024年平均2.5%とされ、生活コストの増加が企業の賃金設計に影響を与えてきた。厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」では、大卒初任給の全産業平均は約25万円で、アトラスの新卒初任給はこの水準を大きく上回る水準となる。
アトラスは『真・女神転生』シリーズや『ペルソナ』シリーズなどを手がける国内ゲームソフト開発会社。2013年11月にセガの子会社であるセガドリームに事業継承された後、2014年4月にインデックス(新社)の会社分割を経て株式会社アトラスとして再出発した。現在は『メタファー:リファンタジオ』など家庭用ゲームソフトの企画・開発・製造・販売も手掛けている。
国内ゲームメーカーでは近年、賃上げの動きが相次ぐ。親会社のセガは2023年11月に大卒初任給を30万円から33万円に引き上げ、既存正社員の基本給も平均で10%増額した。人材確保や離職防止に向けた競争が強まるなかで、グループ内外の動きに呼応した処遇改善の流れが広がっている。
市場規模と雇用環境も、報酬制度見直しの背景となる。経済産業省の「令和5年度 情報通信産業実態調査」によると、ゲーム産業の売上高は約2兆円に達する。同調査は人材不足率の高さや、IT・ゲーム分野の有効求人倍率が1.5倍超と全産業平均の1.3倍を上回る状況も示しており、慢性的な人手不足がうかがえる。民間の推計では、日本のゲーム産業の2024年国内売上は約2.2兆円、海外売上比率は70%超とされ、グローバル展開が進むなかで制作現場の人材獲得と定着が大きな経営課題となっている。
固定残業20時間へ 働き方改革踏まえ設計見直し
今回は固定残業時間も30時間から20時間へ短縮する。給与体系の中で基本給の比率を引き上げることで、時間外労働に依存しない賃金構造への移行を進め、働き方の選択肢を広げつつ、処遇の安定性を高める狙いがある。報酬増額とあわせて、クリエイティビティの発揮や生産性向上を後押しする制度設計と位置づける。
固定残業を含む賃金設計の見直しは、働き方改革関連法の施行以降、時間外労働の上限規制や労働時間管理の厳格化が求められるなかで、多くの企業に広がってきた。アトラスも固定残業時間の短縮と基本給の引き上げを同時に進めることで、法制度への対応と人材投資を両立させる姿勢を打ち出した格好だ。
