株式会社アスマーク(東京都渋谷区)は、生成AI(人工知能)および自然言語処理技術を活用し、マーケティングリサーチプロセスの変革を狙う「調査プロセス全自動化プラットフォーム」の基幹技術で特許を取得した。調査票のデジタル化に伴う手作業負担の軽減が進めば、調査設計から集計までの運用負荷の見直しにつながる可能性がある。
特許技術は、生成AIが調査票のテキスト構造や文脈を解析し、単一回答や複数回答などの質問タイプを自動で判別したうえで、アンケートフォームをWeb上に直接生成する点に特徴がある。調査票に記述された分岐条件や表示ロジックを読み取り、動的な質問フローを自動で構築することも可能としている。アスマークは、この技術を自社のSaaSプラットフォームの中核とし、調査票作成から配信・集計までの工程に残る手作業の縮小を掲げる。主力であるマーケティング・リサーチ業務の制作・運用領域に生成AIを組み込む構図だ。
年間12,800時間の工数
アスマークでは、調査票をデジタル化する工程だけで年間12,800時間の作業工数を費やしている。調査票のWebアンケート画面への変換は複雑なスクリプト知識を要し、熟練技術者への依存による業務の属人化が課題となってきた。手動作業に起因するヒューマンエラーが調査事故の50%以上を占める実態も示している。
特許技術の強みとして同社は、年間41,500時間に及ぶ実務データに基づき独自に開発したリサーチ業界特化型のプロンプトエンジニアリング技術を挙げる。汎用的なAIでは到達し得ない高い変換精度と業務適合性を実現しているとし、作業時間を最大70%削減し、エラー率を最大90%削減することが可能としている。効率化で創出された時間を戦略立案やインサイトの抽出に振り向ける運用も想定する。特許の出願番号は特願2025-116909で、発明の名称は「調査プロセス全自動化プラットフォームに関する基幹技術」とした。
アスマークは2001年12月設立で、東証スタンダード上場(証券コード4197)。ネットリサーチを軸に、グループインタビュー、デプスインタビュー、会場調査、ホームユーステスト、海外調査、学術調査、難病稀少疾患調査、障がい者調査などを手がける。調査対象の設計から回収、分析までの工程を幅広く担い、取引企業数は1,000社以上。こうした運用現場で蓄積した作業データをもとに、調査票の構造理解とWeb化工程の自動生成に技術を寄せてきた。
調査票のWebアンケート化は、設問文の入力や選択肢の整形にとどまらず、分岐や表示制御の設定が絡むため、実務上はスクリプトやロジック設計の作業が増えやすい。アスマークは「調査プロセス全自動化プラットフォーム」を掲げ、生成AIと自然言語処理を業務実装する方向性を打ち出しており、今回の特許取得は、スクリプト知識への依存や作業時間の増大、ヒューマンエラーに起因する調査事故といった課題に対応する取り組みとなる。
段階導入で外部提供
アスマークは今後、まず自社業務への全面的な活用を通じて技術検証を進める。続いてパートナー企業への限定的な提供を開始し、最終段階としてSaaSプラットフォームとして本格展開する計画だ。サブスクリプションやAPI形式などを想定し、国内外の調査会社や事業会社に向けて広く提供していく方針を掲げる。
自社活用からパートナー提供、さらに外部向けの広域提供へと段階を分けることで、利用主体ごとに取り扱う範囲を切り分ける。運用面では、調査票の入力からWeb画面生成、配信・集計までの一連工程のうち、どこまでをプラットフォーム側が担い、どこからを利用側の業務設計で補うかが、提供段階ごとに異なる設計となる可能性がある。
同社はマーケティング・リサーチ事業に加え、HR Techサービス「Humap」も展開する。生成AIと自然言語処理の活用をSaaSの基幹技術として据え、調査票の変換工程を中心に自動化を進めることで、調査運用の制作領域に残る属人的作業をソフトウエアの工程へ移行させる構想だ。
AI実装が迫る再編
今回の動きは、リサーチ実務の中でも「調査票をWebアンケート画面へ変換する」工程に、生成AIを適用する技術設計を特許として押さえた点に特徴がある。アスマークは、手動作業に起因するエラーが調査事故の半数超を占めるとし、業務品質の論点が入力・変換工程に集中している状況を浮き彫りにした。調査票は設問タイプの判別、分岐条件、表示ロジックなどが複合しやすく、生成AIがテキスト構造と文脈を解析して質問タイプを自動判別し、Web上に直接生成する設計は、従来のスクリプト知識への依存を自然言語処理の工程へ置き換える狙いと重なる。
アスマークが強調するのは、年間41,500時間分の実務データに基づくリサーチ業界特化型のプロンプトエンジニアリング技術だ。モデル単体の性能よりも、実務上の例外処理や表記ゆれを含む入力データを前提にした設計に軸足を置き、変換精度と業務適合性の両立を図る。業務データを継続的に蓄積しやすい事業者ほど、プロンプト設計や運用ルールの更新で差がつく可能性があり、特許取得と合わせて、どの単位で「工程の標準化」を外部へ切り出すかが焦点となる。
段階導入の計画は、技術の検証と提供範囲のコントロールを同時に進める設計といえる。第1段階で自社業務へ全面活用し、第2段階でパートナー企業へ限定提供し、第3段階でSaaSプラットフォームとして本格展開する流れは、利用者を拡大しながら運用知見を積み上げる方向性だ。サブスクリプションやAPI形式を想定することで、調査会社だけでなく事業会社の調査部門が既存の業務ツールと接続しながら導入するケースも見込む。調査業務は社内外の関係者が関与しやすく、設計・配信・集計の分業が生じるため、APIでの取り込みは工程分割を維持しつつ自動化を差し込む手段になり得る。
一方で、生成AIを業務工程に組み込む場合、どの工程を自動生成の対象とし、どの工程を人手のレビューに残すかが運用設計の核となる。アスマークは作業時間を最大70%削減、エラー率を最大90%削減できる可能性を示すが、効果は工程全体の設計や利用範囲に左右される。自社活用から外部提供へ移るにつれ、入力される調査票の形式や表現は多様化するため、調査票の書式標準化、入力ルールの整備、運用担当者の役割分担など、ソフトウエア導入と同時に業務側の整流化が求められる局面も想定される。
アスマークはモニター基盤を保有し、取引企業数1,000社以上の実績を掲げる。こうした調査運用の裾野を持つ事業者が、変換工程の自動生成をSaaSの基幹技術として外部へ展開する構想は、調査会社における制作・運用のリソース配分にも影響し得る。調査票のWeb化が技術者のスクリプト技能に依存してきた場合、自動化の進展は制作の内製・外注の判断や、調査運用チームのスキル構成の見直しにつながる可能性がある。ISO認証取得による管理体制やパネル品質管理といった既存の統制プロセスと、自動化されたプラットフォーム運用との整合をどう図るかも、外部提供時の検討課題となる。
