株式会社朝日工業社(東京都港区)は、茨城県つくば市に「朝日工業社つくば技術研究所」を開所した。新施設は建築設備や環境分野の新技術研究を担う中核拠点となる。同日の式典には行政や学術機関の関係者が出席し、研究拠点の本格始動を祝った。
同研究所は、省エネルギー空調や植物生育環境、環境改善技術などを体系的に研究し、産学連携を通じた持続可能な社会づくりへの貢献を目的とする。研究成果を事業開発に反映させることで、同社の建築設備分野における技術基盤の強化を図る方針だ。
建築設備と環境技術を実証
つくば技術研究所は、建築設備の省エネ性能と快適性を並行して検証する実験空間を備える。床吹出し式や壁放射式など複数の空調方式を組み合わせ、オフィス環境でのエネルギー効率を比較する。疑似太陽光照射装置を用い、直射日光が快適性に及ぼす影響も分析する予定だ。
これらのデータを基に、実運用を想定した新しいオフィス空調システムの提案につなげる。
また、植物生育環境制御の研究にも注力する。複数の閉鎖型植物栽培室を備え、葉物野菜だけでなく高付加価値作物や医薬品原料植物の育成にも取り組む。
一部の栽培室はカルタヘナ法に準拠しており、バイオ関連研究にも対応可能とした。
教育機関や民間企業との共同研究により、栽培システム開発や農業分野の省力化技術を模索する。
環境改善と人材育成にも軸
同研究所では、脱臭や揮発性有機化合物(VOC)除去などの環境改善技術の発展にも力を入れる。特設実験室で気流可視化などの研究を行い、作業環境の改善から地球規模の環境対策まで幅広く応用できる装置開発を目指す。
これらの研究開発活動は、同社が長年培ってきた空調・衛生技術の延長線上に位置づけられる。
さらに、社内教育施設としても研究所を活用する方針だ。天井内通路やスケルトン天井を備えた会議室を設け、社員が実際の空調設備を見ながら学べる環境を整備した。透明構造の機器を使用し、空気や水の流れを可視化することで、若手技術者の実践的理解を促進する狙いがある。
ZEBなど認証取得で環境配慮
建物は延床面積約3,782㎡、地上2階建ての鉄筋コンクリート造で、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を達成している。BELS六つ星を取得し、CASBEEおよびLEEDの環境評価認証も申請中だ。
設計・監理は株式会社日建設計、建築工事は清水建設株式会社が担当した。環境認証を多数目指す点からも、施設自体が持続可能な建築のモデルケースとなることを企図している。
施工では、電気設備を株式会社雄電社、空調・衛生設備を同社東関東支店と北海道アサヒ冷熱工事株式会社が共同で担当した。
グループ内外の事業連携を通じて、設備施工から研究開発までを一体的に運営する体制を整えたとみられる。
産学協働で持続可能社会めざす
同社は、つくば技術研究所を技術開発の中核拠点と位置づけ、大学や研究機関、企業との協働を拡大する意向を示している。太陽光利用や空調省エネの研究、バイオ分野での栽培実験など、異分野融合の研究環境を整備した結果として、複合的な技術開発が進展する可能性がある。
髙須康有社長は式典で「探求心と知的好奇心を育み、次世代の環境づくりに挑戦する拠点にしたい」と述べた。
関係者からも、建築設備と環境制御を横断する研究拠点が国内では限られているとの見方が出ている。持続可能性を重視した設備技術の実装が、今後の建築業界全体の共通課題として浮き彫りになっている。
今後は、環境性能評価の進展や共同研究の拡充を通じて、産学官連携の深化が注目される。
今回の開所は、同社の環境技術戦略を具体化する動きの一環といえる。