旭化成株式会社(東京都千代田区)は、今年度発行した統合報告書「旭化成レポート2025」が「第5回日経統合報告書アワード」で準グランプリを受賞したと発表した。504社・団体の中から選ばれ、昨年度に続き2年連続の受賞になった。同社は、ステークホルダーの疑問に向き合う設計を見直し、問いの立て直しを進めた。
旭化成は統合報告書を、投資家をはじめとするステークホルダーの疑問に真正面から向き合い、対話するためのツールと位置付けている。今回の「旭化成レポート2025」では、昨年度にステークホルダーから寄せられた「6つの問い」への回答に対する意見と、同社の取り組みの進捗を踏まえ、問いを立て直したうえで、さらに踏み込んで回答する構成に改めた。情報発信の拡充にも取り組む。
504社選定の準グランプリ
受賞は「第5回日経統合報告書アワード」によるもので、対象は504社・団体とされた。旭化成は昨年度に引き続き準グランプリを受賞し、2年連続となった。受賞対象は、今年度発行の統合報告書「旭化成レポート2025」だ。同レポートは2025年10月14日に発行している。
統合報告書は、財務情報に加え、事業活動の考え方や取り組みの進捗を含めて示す文書として企業が発行する。日経統合報告書アワードは日本経済新聞社が主催し、統合報告書の質を評価する枠組みとして運営されている。旭化成は、同アワードでの評価を踏まえつつ、投資家など外部との対話を念頭に置いた編集方針を掲げている。
企業側の説明では、レポートの構成面で前年に設定した「6つの問い」を再整理した。ステークホルダーから得た意見と取り組みの進捗を踏まえて問いを立て直し、回答をより踏み込んだ内容に改めた。社長は工藤幸四郎。発行したレポートを対話のツールとし、外部の疑問を起点に構成を組み立てる姿勢を明確にしている。
株式市場での企業評価を示す指標としては、2025年3月期時点のデータで、旭化成の時価総額が12,950億円、PBR(実)が0.68倍、自己資本比率が49.5%となっている。こうした資本市場の関心領域と接点を持つ開示のあり方が、統合報告書の作成実務に反映される場面もある。
また、旭化成は無形資産や知的財産の扱いでも継続的な情報発信を進めている。知財活動に関する資料では、TBCプロジェクトによる知財の直接収益化や、PAIとEBITDAの相関分析に基づく定量開示を実施したとしている。知財活動の指標では、貢献額を投資額で割る指標が2020年の5.2%から2025年に10.5%へ倍増したというデータも示されており、統合報告書を含む開示全体の厚みを増す材料になっている。
外部環境では、統合報告書を通じて企業が示す情報範囲が広がる傾向もみられる。旭化成が知財領域で示したように、無形資産に関する定量情報や、事業との結びつきを説明する開示は、統合報告書と親和性が高いテーマとされる。実務面では、財務指標だけでなく、研究開発や知財活動などの取り組みを、どの単位で整理して提示するかが問われやすい。
旭化成が示したデータの一部では、樹脂複合化技術に関する分析として、CNF強化ゴム組成物が48件、高剛性樹脂複合化技術が23件といった件数が挙げられている。技術や知財に関する情報の整理は、統合報告書内での説明の厚みにもつながり得る領域であり、同社の情報発信拡充の方針とも接続する。
6つの問いで構成更新
旭化成は、昨年度にステークホルダーから得た意見と同社の取り組みの進捗を踏まえ、「6つの問い」の立て直しを行った。これにより、より踏み込んだ回答へと構成を変えた。統合報告書を投資家などステークホルダーの疑問に真正面から向き合い、対話するためのツールと位置付けている。
レポートの設計は、前年の「6つの問い」を起点に組み直した。問いに対する回答を一度提示して終えるのではなく、ステークホルダー意見と進捗を踏まえて問いを再整理し、回答の踏み込み度合いを上げる構成とした。対話を意識した設計の更新が、今回の発行物に反映された。
併せて旭化成は、企業価値向上に向けた期待を深めてもらうため、情報発信の拡充に努める方針を掲げた。統合報告書単体の構成変更にとどまらず、知財活動の定量開示など既存の情報発信の積み上げとも連動させ、統合報告書を軸に社内外の対話の論点をそろえる狙いがある。
運用面では、ステークホルダー意見と取り組み進捗を踏まえて問いを立て直し、踏み込んだ回答構成にする手順を採っている。外部の疑問を起点にした問いの設計と、その問いに沿った回答の更新が、報告書づくりの枠組みとなっている。
