アサヒグループ食品は、酵母や乳酸菌の輸出を強化する方針を示した。国内食品事業と並ぶ事業の柱とするグローバル成長事業として位置づけ、酵母エキスと乳酸菌の市場拡大を背景に、長年培った技術による独自価値の提案を進める。
酵母エキスでは、高付加価値品での展開を進める考えだ。酵母エキスは国内のBtoB販売で主に他社の調味料商品に使われており、チキンコンソメスープに使用した場合に食塩量を抑えても塩味を感じられるといった機能を打ち出す。乳酸菌は、アサヒグループの100年にわたるカルピス乳酸菌研究で培った知見をもとに、機能性乳酸菌素材のグローバル展開を本格化する方針だ。
酵母市場31億ユーロ
酵母エキスを巡っては、世界の市場が拡大している。調査会社フォーチュン・ビジネス・インサイツによると、世界の酵母エキス市場は2018年の12億ユーロから2029年には31億ユーロへ拡大する見通しだ。アサヒグループ食品はこの環境下で、高付加価値の酵母エキスで存在感を高めていく方針を掲げる。酵母エキスはバイオ、健康商品、ペットフード、化粧品にも使われており、用途の広がりをにらんだ提案を強化する。
アサヒグループは1966年、日本で初めて酵母から栄養素やうまみ成分だけを抽出した酵母エキスを開発し、製品化した。酵母から酵母エキスを取り出した後に副産物として生じる酵母細胞壁には、たんぱく質や食物繊維が含まれることから、アサヒグループ食品は酵母細胞壁の活用領域の拡大にも取り組む。2月27日の事業方針説明会で川原浩社長は、高付加価値酵母で「ナンバーワンカンパニーになりたい」と述べ、ボリュームではなく際立った特徴と高付加価値を持つ酵母メーカーを目指す考えを示した。
乳酸菌でも海外での事業展開を本格化させる。高まる健康ニーズへの対応として機能性乳酸菌素材のグローバル展開を進め、ポストバイオティクス(死菌)を中心に事業を広げたい考えだ。基盤となるのが「カルピス」の技術であり、100年にわたるカルピス乳酸菌研究で蓄積した知見をもとに素材提案を進める。
輸出強化は、研究・生産体制の拡充とも連動する。酵母分野では、2025年4月にドイツのライバー社がグループ入りした。ライバー社はビール酵母を使った商品で世界的な技術力と生産能力、販売網を持ち、アサヒグループ食品は酵母事業が一段ステージを上げたとみている。乳酸菌分野では、2025年5月1日にアサヒ目黒研究所(旧帝人目黒研究所)がグループ入りし、同研究所の研究能力を活用して国内外での事業拡大を目指す。同研究所は約100年にわたり培ってきた研究開発力と独自製法により、乳酸菌などの培養技術で高品質かつ安定した供給を行っている。
背景には、素材ビジネスが食品にとどまらず周辺領域へ広がる市場構造の変化がある。酵母エキスは調味料用途での活用が進む一方、バイオや健康商品、ペットフード、化粧品といった用途にも広がっている。世界市場は2029年に31億ユーロ規模が見込まれ、数量・金額とも拡大局面にある。アサヒグループ食品は、1966年の酵母エキス開発に端を発する技術資産を梃子に、高付加価値領域での展開を強める。
ライバー社連携を軸
酵母事業の運営では、国内外の役割分担が焦点となる。アサヒグループ食品は、ライバー社の技術力や生産・販売基盤を活用する構えだ。国内では2024年にアサヒビール茨城工場で酵母エキス向けの酵母培養を開始し、アサヒグループ食品栃木小金井工場で酵母エキス化の試験を経て、2027年から本格販売する計画を示した。海外展開の強化は、ライバー社の事業基盤と国内での培養・試験を組み合わせる形で進める。
乳酸菌では、研究開発の担い手が明確になっている。アサヒグループ食品はポストバイオティクス(死菌)を中心に展開していく方針を掲げ、「カルピス」の技術を軸に据える。研究体制ではアサヒ目黒研究所の研究能力を活用し、国内外での事業拡大を図る。同研究所が培養技術を通じて高品質で安定した供給を行っている点を生かし、素材供給の中核拠点として組み込む。
このほか、グループとしての事業運営でも節目があった。アサヒグループ食品では2025年9月にシステム障害が発生し、物流・生産に影響が出た。2月27日の事業方針説明会で川原社長は、消費者や流通に多大な迷惑をかけたとして謝罪し、復旧完了を公表した。物流システムの正常化を終えたうえで、復旧後には全国7カ所で感謝イベントを実施した。
取引実務の面では、酵母はライバー社と国内工場の分担、乳酸菌はアサヒ目黒研究所の研究・培養技術の活用が軸となり、供給と研究の担い手が複線化する。アサヒグループ食品は、酵母エキスと機能性乳酸菌素材の輸出強化をグローバル成長事業の柱として推進する構えだ。
