AXプロデュース事業を展開するアンドドット株式会社(東京都渋谷区)は、一般社団法人日本旅行業協会(JATA)が主催する「経営フォーラム」に代表の茨木雄太氏が登壇した。JATA会員の旅行事業者の経営層や宿泊事業者、自治体関係者などに向け、旅行業界における最新のAI活用事例を紹介した。
アンドドットは、AIがもたらす価値を「事務作業を効率化させる手段」と「顧客体験を最大化し旅行価値を向上させる目的」の2軸で示し、経営戦略上の位置づけの違いを提示した。フォーラムの場では「AIに委ねるべき領域と、人が向き合うべき提供価値の再定義」をテーマに掲げ、JATA事務局次長の渡辺正樹氏、一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)業務執行理事兼事務局長の小村亮氏との対談を通じ、経営層・リーダー層に向けて具体的な提言を行った。アンドドットにとっては、AIを活用した業務改革を企画から実施まで伴走するAXプロデュース事業の考え方を、旅行事業者を含む業界関係者に示す機会となった。
AX伴走支援の提示
アンドドットはAX(AI Transformation)として、AIを活用した業務改革を企画から実施まで伴走支援する「AXプロデュース事業」を掲げる。茨木氏の経歴紹介では、金融機関や大学法人などへの支援実績が示され、異業種での取り組みを踏まえた知見を旅行業界にも応用し得る点を強調した。説明では、行程表や見積書の作成、旅費計算といった旅行業特有の書類業務を取り上げ、どの作業をAIに寄せ、どの領域を人が担うかを切り分けて設計する重要性を指摘した。
フォーラムでは、アンドドットがAI活用の「4つの発展フェーズ」を提示した。チャット型AIツールの活用から始まり、業務特化型AIツールの導入、業務プロセスそのもののAIへの置き換え、新規価値創出という4段階で整理し、旅行業界の先行事例も交えて説明した。単なる導入にとどまらず、日々の実務で使い続けられる仕組みに落とし込むことの必要性を示した点も特徴となった。
個人情報と著作権の論点
後半の対談セッションには、JATAの渡辺氏とGUGAの小村氏が参加した。旅行業の現場では、顧客情報を含む手配情報や各種文書を扱う機会が多いことから、茨木氏は個人情報の取り扱い範囲や著作権への配慮といった懸念点を挙げた。あわせて、組織としてのルール構築と人材育成(AIリテラシー向上)をテーマに据え、経営層・リーダー層に対して、運用設計と社内浸透を並行して進める視点を促した。
フォーラムでは、旅行業界団体であるJATAの事務局、生成AIの活用普及を掲げるGUGA、AXプロデュースを手がけるアンドドットの3者が同席し、経営判断に近い層へAI活用の論点を整理する構図となった。ツールの選定や試行に加え、業務プロセスの切り分け、情報の取り扱い、社内教育といった論点が、導入の初期段階から並行して浮上しやすい現状を踏まえ、書類業務の比重の高さを意識しながら、個人情報や著作権といった取り扱い上のリスクも含めて同じテーブルで議論した。旅行事業者や宿泊事業者、自治体関係者に対し、AI導入とガバナンスを一体で検討する必要性を示す内容となった。
今回のフォーラムでは、AI導入の手順にとどまらず、日々の実務で使い続けられる仕組みに落とし込むための運用ルールや教育体制の整備が、旅行事業者側の課題として浮き彫りになった。AIに委ねる業務範囲の区分と、個人情報・著作権を含むデータの取り扱いルールをどこまで精緻に設計するかが焦点となる。社内外で共有する文書やデータのうち、どの範囲をAI利用の対象とするかを定め、教育・ルール整備を組み合わせた運用設計が問われる。アンドドットは旅行業界AI経営フォーラムへの登壇を通じ、こうした論点を経営層に提示し、旅行業界におけるAI活用の方向性を示した。
