アモーヴァ・アセットマネジメント株式会社(東京都、旧社名:日興アセットマネジメント)は、国内投資先企業の株式議決権行使に関する「国内株式議決権行使基準」を改定した。新基準は2026年4月から適用され、定款変更、株主提案、取締役選任など4項目で判断基準が見直される。同社としては日興アセットマネジメントから社名を変更後、初めての大幅なガバナンス方針改定となる。
改定は国内上場企業に対する議決権行使判断の透明性を高める狙いがあり、資本政策の柔軟性と株主の権限バランスを見直すものだ。資本コストを上回るROE水準を重視するほか、取締役会の女性比率を段階的に引き上げる。今回の改定は、スチュワードシップ責任の実践を重視する同社の運用方針の一環として位置づけられている。
資本政策判断を柔軟化、取締役会の権限を拡充
アモーヴァ・アセットは定款変更に関し、剰余金の配当などを株主総会決議に加え取締役会でも決議可能とする場合、原則として賛成する方針に転じる。
従来は取締役会のみで決定する形を原則反対としていたが、株主決議を残した形での取締役会関与を認める。これにより資本政策の機動性を高める一方で、株主権限を損なわない範囲での運用を許容する判断に改めた。取締役会のみで完結する変更案には、従来通り反対を維持する。
背景には、企業の資本政策を取り巻く環境変化とガバナンス体制の成熟がある。
会社法改正やコーポレートガバナンス・コードの浸透を受け、取締役会の経営関与が深化していることを踏まえた対応とみられる。アモーヴァ・アセットは、企業価値向上に資する判断としてこの柔軟化を打ち出した。
株主提案判断を明確化、女性登用と業績指標を強化
株主提案の審査基準も具体化した。経営執行を過度に妨げる、提案理由が不明確、または既に企業の対応が十分と判断される場合は原則反対とする。
一方で、気候変動対応や排出削減目標の設定など、中長期的な企業価値向上に資する提案には原則賛成する。株主提案の多様化を踏まえ、経営の自立性と株主関与の適度な均衡を図る狙いがある。
また、取締役選任基準では女性取締役の人数要件を引き上げた。2026年4月以降、TOPIX500構成企業で女性取締役が2名未満または構成比15%未満の場合、経営トップの選任議案に反対する方針を導入する。TOPIX500以外では女性取締役が不在の場合に反対とする。
政府が2030年までに女性役員比率30%以上を掲げる中、各社の多様性推進を求める姿勢を鮮明にした。
ROE基準を8%に引き上げ、PBR指標も導入
業績基準の改定では、取締役選任判断の際のROE基準を従来の5%から8%に引き上げる。過去3期連続でROE8%未満かつ業界内50%下位に該当する場合、当該期間に在任した取締役に反対する方針だ。
ただし、PBRが1倍を上回る場合は除外とする。資本コストを上回るリターンを求める姿勢を、数値基準で明確に打ち出した形だ。
同社はこれまで投資先との対話を通じ、資本効率改善を促してきた。
議決権行使でも資本コスト意識を反映する姿勢を強める。市場全体でPBR1倍割れ企業が多い中、経営改革を促す議決権行使方針を持つ運用会社として存在感を高める動きとなる。
ガバナンス潮流と外部環境、対話重視姿勢を維持
アモーヴァ・アセットの前身である日興アセットマネジメントは1959年設立の資産運用会社で、三井住友トラストグループに属する。
2025年9月に社名を変更して以降、約39兆円超の運用資産を持ち、世界200名超の担当者が投資判断を担う。近年はスチュワードシップ責任の履行を軸に、投資先企業とのエンゲージメントを強化してきた。
背景には、コーポレートガバナンス・コード改訂やESG投資拡大など、投資判断の社会的責任を問う潮流がある。
議決権行使の透明性と説明責任を求める要請が強まる中、資本効率改善や多様性の確保を数値基準として明示した今回の措置は、制度運用の一貫性を示す試みともいえる。ガバナンスと経営実績の連動が企業評価に直結する局面が広がりつつある。
企業対話体制を整備、行使判断プロセス公開
同社は今後、企業との対話を重ね、各社の方針や対応を反映させた議決権行使を行う考えだ。
対話を希望する企業向けに問い合わせメール窓口を設置し、意見交換の機会を確保している。ガイドラインと基準は自社ウェブサイトで公開しており、投資先企業の理解促進を図る。運用会社として、説明責任の履行と透明性の確保を重視する。
日興アセットマネジメントからアモーヴァ・アセットへと転じた同社の今回の動きは、スチュワードシップ経営の深化と日本企業のガバナンス改革の流れの中で位置づけられる。