アイレット(東京都港区)は、国立研究開発法人理化学研究所と共同で、Google Cloud の最新AI技術を活用した医科学研究向けデータ駆動型解析基盤を構築した。画像・テキスト・数値といった多様な研究データを安全に処理でき、匿名化・仮名化を含む解析環境をクラウド上に整備した。これにより、理化学研究所が進める生命医科学分野の研究において、AIによる高負荷な解析をセキュアな環境で実行できるようになった。
本件は、理化学研究所の研究課題「AIを活用したデータ駆動型アトピー性皮膚炎研究」の一環として実施された。アイレットは共同研究契約の下で、Google Cloud の技術支援を担い、オンプレミス環境とクラウドを結ぶ専用線構成を採用。これにより、機微な医療データをインターネットを介さずに安全に転送し、柔軟なリソース調整を可能とする仕組みを整えた。理化学研究所側はデータ解析および仮説検証を行う主体としてプロジェクトを推進している。
研究基盤を支えるクラウド運用
構築にあたっては、Cloud Workstations と Batch を活用し、遺伝子発現解析などのパイプラインを Nextflow 上で動作させる設計を採用した。Google Cloud の Virtual Private Cloud や VPC Firewall などを用い、外部接続を遮断したプライベート環境を実現した。オンプレミスと Google Cloud は専用線接続(Cloud Interconnect)で連携し、Cloud VPN によって他クラウドや仮想デスクトップ環境とも閉域で通信できるようにしている。
また、VPC Service Controls や Private Service Connect により、Google Cloud 各サービスをプライベートIPで接続。アプリケーション動作の監視には Cloud Monitoring を導入し、オンプレミス側のログを Cloud Logging に転送する仕組みも備えた。この構成によって、セキュリティと性能を両立したスケーラブルな研究環境を構築している。
セキュアな通信経路で共同研究を支援
理化学研究所生命医科学研究センターの桜田一洋プロジェクトディレクターと、医療データ数理推論特別チームの川上英良チームディレクターが所属するチームが研究面を主導し、アイレットが技術設計とクラウド環境構築を担当した。クローズドなネットワーク構成を前提に、研究者は仮想デスクトップ経由でのみクラウド上のデータにアクセスする形をとっている。これにより、研究データの持ち出しを制限しつつ、柔軟な分析作業を可能にしている。
本基盤は、マルチクラウド環境を組み合わせたハイブリッド構成であり、オンプレミスとクラウドの双方の特性を生かすよう設計された。VPN接続と仮想デスクトップを用いた経路制御を行い、インターネットを介さないセキュアな運用体制とした点が特徴だ。
今後も同様の構成を用いたデータ解析環境の運用が段階的に進行しており、理化学研究所の情報基盤整備とも連動して研究基盤の発展が続いている。
この取り組みは、理化学研究所が中長期目標で掲げる「研究データ管理・共有・解析基盤の開発・運用」にも合致しており、クラウドを活用した協働型研究の実務基盤整備として位置づけられる。アイレットは、Google Cloud のパートナーとして、研究機関が求める高いセキュリティ条件下での環境構築支援を続ける方針を示している。
